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てんかん[専門外来]

はじめに

 当院では、初診の患者さんは、他の医療機関からの紹介状をご持参いただくことを原則としております。紹介状をご持参でない方は、初診時選定療養費(実費)を負担いただきます。てんかんの診断や治療をご希望の患者さんは、出来るだけかかりつけの先生からの紹介状と当院地域連携室へのご予約をお願い致します。

てんかんとは

 「てんかん」は、てんかん発作を繰り返す脳の病気で、年齢、性別、人種に関係なく発病します。世界保健機関(WHO)による「脳の慢性疾患」は、脳の神経細胞(ニューロン)に突然発生する電気的な激しい興奮が繰り返される
てんかん発作を特徴とし、臨床症状や検査異常などの様々な現象を伴うもの、と定義されています。
 てんかんの発症は、人口100人のうち0.5〜1人(0.5〜1%)の割合でみられる病気です。発症年齢は3歳以下の乳幼児、および60歳を超えた高齢者に多く、発症年齢に二つの高まりをもつ特徴(2峰性)が知られています。
図1:てんかんの発症率

てんかんの発症率当院成人てんかんの外来の年齢群

 当院では、てんかんの患者さんを年齢でおおよそに区分し、15歳以下の小児てんかんを小児科(小児神経
専門医)、16歳以上の成人てんかんを脳神経外科(てんかん専門医)で診療しています。

図2:当院外来における成人てんかんの患者年齢群
当院外来における成人てんかんの患者年齢群

図3:当院外来における成人てんかんの患者発症年齢
当院外来における成人てんかんの患者発症年齢

治療について

 当院では発作症状への対応と脳波、MRI、SPECTを用いた治療を行っています。
 発作症状への対応は、問診による診察が最も大切です。また、ご家族のスマホで発作が起きた際の症状を撮影していただくことが、診断に結びつきやすくなります。最近ではご家族に協力をお願いすることが多くなっています。
 発作の症状は焦点性発作(脳の部分発作)と全般発作(脳の全体発作)に二分して考えていきます。その上で、家族歴、発症年齢、発作の時間帯などを加味しながら診断に結びつけています。

 治療薬にはたくさんの種類があり、それぞれに特徴がありますが、最近の抗てんかん薬(レベチラセタム、ペランパネル、ラコサミド、ラモトリギン、トピラメートなど)は、多剤併用時の副作用が少ない薬剤を組み合わせて治療に用いることが多くなっています。

 内服治療に抵抗を感じる時は、いくつかの理由があると思います。一つは、急に定期的な服薬を始めることへの抵抗かと思います。例えば、高血圧、脂質異常症が指摘された時でも同様です。すぐに受け入れができないこともあります。ご家族の方も焦らずに、今後も慢性疾患に付き合っていくことを理解してあげてください。
 次に、てんかんと診断されて不利益を感じる場面があることだと思います。例えば自動車の運転では、きちんと通院加療を続け、2年間発作が消失したら、運転は可能になります。
 費用の軽減には、自立支援医療があります。制度の利用については、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や、お住まいの自治体窓口(例;伊丹市障害福祉課)で申請が可能です。

内服による治療成績

 イギリス神経内科教授Brodieらは、1098例の初発てんかん症例のうち49.5%が、一種類の抗てんかん薬で発作抑制に至ったとしています。その一方、多剤併用の症例でも31.6%は、発作抑制に至らず、難治性だったとしています。一般的なてんかん治療では、この数字を参考に、発作症状と病因を考慮した治療をしています。当院では、難治性てんかんの診療紹介を受けていますが、初発てんかん発作の方の診療紹介も受け入れています。306人の連続症例で見ると、てんかん発作が一年に一回以下に抑制されていた症例は57%でした。投薬数もまた、平均1.3剤の服用でした。

図4:Brodieらの報告(Epilepsia(Suppl.):54:5-8,2013)
Brodieらの報告(Epilepsia(Suppl.):54:5-8,2013)

高度な検査、手術(切除手術、および迷走神経刺激療法など)

 当院は、準てんかんセンター(脳神経内科、精神科)として手術治療まで実施しています。
 “難治性”てんかんで診療紹介された際、3種類以上の抗てんかん薬服用の経験があり、2、3剤の抗てんかん薬の併用療法をしていても、1ヶ月に1−2回以上の発作が残存している方については、検査入院を勧めています。
 24時間のビデオを撮影しながら脳波測定を行い、発作時の脳波を測定し、てんかんの診断を進めていきます。特にMRIで病変を伴うような焦点性てんかんでは、手術治療適応の可否を検討しています。また、病変がなく、難治性の時は迷走神経刺激療法(VNS)を実施しています。

図5:側頭葉てんかんの手術
側頭葉てんかんの手術

図6:迷走神経刺激装置(VNS)

迷走神経刺激装置(VNS)

治験

 難治性てんかんの患者さんでは、既存の抗てんかん薬での治療に限界があることも否めません。当院には、治験コーディネーターと共に、治験を提案し、参加をお願いすることもあります。

日本てんかん学会< https://square.umin.ac.jp/jes/>

日本てんかん協会< https://www.jea-net.jp>
全国てんかんセンター協議会< http://epilepsycenter.jp>