新型コロナウイルスに関する論文掲載について

2021年3月18日

 整形外科ではコロナ禍においても必要な手術を安全に継続して提供するため、術前に新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)に対する検査を十分に行ってきました。
 その取り組みを2つの英語論文にまとめ、Journal of Orthopaedic Scienceに投稿しましたところ共に採択されました。
 
 それぞれの論文名と査読者からのコメント、およびそれに対する執筆者からの回答は以下の通りです。
 

<論文1>

論文名:
RT-PCR testing should be performed prior to elective orthopaedic surgery during the COVID-19 pandemic
J Orthop Sci. 2021 Jan;26(1):179-181. doi: 10.1016/j.jos.2020.10.009. Epub 2020 Nov 6.
 
査読者
 著者らは、無症候ながらSARS-CoV-2感染の既往者が、待機手術患者50名中に2名いたことを明らかにした。SARS-CoV-2の潜伏感染時に手術をうけると術後経過が著しく不良なので、症状の出現の有無にかかわらず、COVID-19のパンデミック時にはRT-PCRによりウイルス感染を検査することが必要であると提案している。小規模の調査研究であるが、COVID-19による第2波の流行が危惧される現状で、本報告を掲載する意義は大きいと考える。
 

<論文2>

論文名:
Challenges and responses of elective orthopaedic surgery during the second wave of COVID-19
 
査読者
 本研究は、COVID-19の第1波の際に整形外科手術の術前にRT-PCR検査、IgM, IgG検査を行い、その結果について検討した研究で、内容も興味深く、よく書かれた論文です。
 
 本研究の結果では、592例中21例(3.5%)でRT-PCR検査、IgM, IgG検査のいずれかが陽性となり、2例でRT-PCR検査が陽性となっております。症状があったのは1例のみで、RT-PCR検査陽性例です。
 本研究の結果から著者らは整形外科手術の術前にCOVID-19に対する検査を推奨しておりますが、RT-PCR検査、IgM, IgG検査の全てを行うべきとのことでしょうか?それともRT-PCR検査だけで良いのでしょうか?
 RT-PCR検査、IgM, IgG検査の全てを行うべきであれば、結果の解離がみられた時にどのように対応するのが良いのでしょうか?結局、RT-PCR検査が陰性であれば手術を行って良いのであれば、IgM, IgG検査は不要でしょうか?またスクリーニング的な使用をするのでしょうか?
 
回答
 本研究の結果では、592例中21例(3.5%)でRT-PCR検査、IgM, IgG検査のいずれかが陽性となり、2例でRT-PCR検査が陽性となっております。症状があったのは1例のみで、RT-PCR検査陽性例でした。
 よって、SARS-CoV-2 antibody tests陽性は既感染を示していると思われます。
 SARS-CoV-2 antibody testsをスクリーニング検査として推奨することはできません。
 しかし、抗体検査陽性の患者は免疫を有していると考えられ、手術を受けるさいに患者の安心材料となる可能性があります。
 RT-PCR検査をcurrent infection with COVID-19の診断として用いることを推奨します。